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元スレURL 真姫「ただのハッピーエンド主義者よ」 概要 通りすがりのハッピーエンド主義者 関連作 次作:真姫「ただのハッピーメーカーよ」 タグ ^西木野真姫 ^μ’s ^のぞえり 名前 コメント
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《騒符「ソウルゴーハッピー」》 No.260 Spell <第四弾> NODE(3)/COST(1) 術者:メルラン・プリズムリバー 効果範囲:プレイヤー、手札、デッキ、冥界に及ぶ効果 発動期間:持続 ターン終了時まで、〔相手プレイヤー〕がダメージを受けるたび、〔あなた〕はライフポイントを3得る。 彼女の表情豊かな演奏を聴くと、冷静ではいられない。 Illustration:雨宮のの コメント メルラン・プリズムリバーのスペルカード。 相手プレイヤーへのダメージをトリガーにライフを回復する。 与えたダメージの数値に関わらず、3点ずつライフを得る。 また戦闘ダメージである必要は無いので、白符『アンデュレイションレイ』や銀ナイフの効果などでも回復することが出来る。 神鬼『レミリアストーカー』や幻想の四季のような大量展開ギミックと組み合わせる事で、一度に馬鹿にならない量のライフアドバンテージを得る事も可能ではある。 とはいえ、根本的にどれだけライフを得た所でカードには影響を与えず、しかも効果が1ターン限りなので上述のような極端なコンボでも用いなければ大した得になりにくい。 わざわざこのカード一枚を使ってライフを得るより、他のカードを組み合わせて相手を早く殺し切った方が確実性があるのは言うまでも無い。 関連 第四弾 メルラン・プリズムリバー/1弾 メルラン・プリズムリバー/3弾 メルラン・プリズムリバー/11弾 メルラン・プリズムリバー/14弾 騒霊三姉妹チーム
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26代目スレ 2008/11/12(水) そのときも、フィオル・グレーデンの肉体はフィボナッチ宇宙のただ中で粉々に崩れ つつあった。 ――ああ、またか。 フィオルの胸に、一種諦観にも似た想いが訪れる。 フィオル・グレーデン。エクサランスチームと関連する何者か。 わかっているのはそれだけだ。 まだ少年の面影を残した顔立ちと真っ赤な髪の毛がラウル・グレーデンとフィオナ・ グレーデンに似ているからなんとなくフィオル・グレーデンと名乗ってはいるが、本当 は誰が父親で誰が母親なのかもわからない。 昔々、グレーデン兄妹、ミズホ・サイキ、ラージ・モントーヤの4人は時間の流れる力 を動力源とした時流エンジンを内蔵するエクサランスという機動兵器を開発した。この開 発は、どうやら失敗したらしい。 時流エンジンは暴走すると時空跳躍すら引き起こす。無限に存在する可能性の中には、 五体満足で別世界に渡った者たちもいたかもしれない。しかし、それは天文学的な確率 だ。大部分は時空のねじれに押しつぶされてしまうか、まったく別の何者かに変質して しまう。 宇宙は、そう簡単に異物を受け入れられるようにはできていない。並行世界が存在す れば、その数だけ物理法則も構成元素も異なる。運良く別世界に出ても、存在すること 自体が難しい。タイムダイバーと呼ばれる人種はほぼ本能的にそうした問題をクリアし てしまうらしいが、フィオルは違う。 不完全な時空跳躍をしたフィオルの肉体は非常に不安定で、常に変質し続けている。 動物や細菌になってしまうくらいならまだましだ。悪くすれば通常物質と反応し、対消 滅にも匹敵する破壊を巻き起こす。それでなくとも変質の末肉体は崩壊し、時間がくれ ばほかの宇宙に弾き飛ばされてしまう。 時の迷子。かつて遭遇したタイムダイバーはフィオルをそう称した。 いったい、何百億何千億の崩壊と再構成を繰り返してきたのだろうか。 フィオルには、自分が何者なのかわからない。 どこかの並行世界で産まれたエクサランスチームの子供なのか、変質してしまったエ クサランスチームの誰かなのか、それとも変質したエクサランスそのものなのか。 ↓ ぼんやりと見える景色は、暗い。どうやら夜のようだ。 コンクリート製の道路とブロック塀、それに2階建てのこぢんまりとした住宅が並んで いる。人間の住んでいる世界らしい。街並みを見る限り、二十一世紀初頭にプラスアル ファした程度の文明レベルのようだ。 視界に映った自分の手は、昆虫の足のように節くれ立っていた。 ――この世界でも俺は、人間の姿ではいられないのか。 変質を繰り返すフィオルは、いままでにもあらゆる形態を取ってきた。泥人形になっ たこともあれば、ウィルスになったこともある。人間でいたことの方が少ない。 ――どうせこの世界からも、すぐに弾き飛ばされる。 街灯の薄い明かりの下に、ひとりの少女が立っているのを見つけた。 いや、あれは少女といってよいのだろうか。 本来乳房があるべき位置には、底知れない虚無が渦を巻いているだけだった。フィオ ルが知る限り、女性はあんな体型をしていない。脳裏をグラマラスな肢体が横切っていく。 少女が口を開いた。 「ゲット・セット・シル・コ・オーッ!」 甲高い声とともに、濃緑色をした大量の汁がどこからともなく津波のように押し寄せ て、少女の上にかぶさった。ゲル状になると、ぶよぶよと顫動しながら急速に膨張し始める。 あっというまに見上げるほどの大きさになったそれは、人間のような手足を備えてい た。ただし、腕や脚には虎のような縞模様が走り、顔などは虎そのものだ。胸の上には 龍に似たオブジェがある。全身、濃緑色をしていた。 ――またか。 どうせ、あれはこの世界の守護者かなにかだろう。 いままでにも似たようなことが何度もあった。フィオルを外敵とみなし、一方的に追 い立てようとするのだ。 ――俺は、 申し開きをしようにも、現在のフィオルには声を出す器官が備わっていなかった。 ――いつまで、こんなことを続けるんだろう。 自分が何者なのかわからない。目的もない。世界を守るなどという使命などもちろん 帯びていない。時空の狭間をさまよい歩き、辿り着いた先では追い立てられ、自分に恋 をしてくれている少女にキスひとつしてあげられない。 ――せめて、放っておいてくれ。 少年の胸に、ふつふつと苛立ちが湧く。 どうせ時間が経てば崩れ去っていく肉体だ。 害意などない。せめて少しの時間休ませて欲しいだけだ。 それなのに、敵意を向け憎悪を向け武器を向け、自分を排除しにかかる。 ――どうして俺がこんな目に。 虎の巨人は動かず、じっとフィオルを見下ろしている。 目の前には、鋭い爪を備えた巨大な足があった。 この足のひと踏みで、自分の身体は簡単に潰れてしまうだろう。 ――俺がなにをした。 なのに敵意を向けられる。 ――殺されるのは、何度目だ。 全身を流れるエネルギーが、熱を帯びて循環し始める。 ――なんだ、じゃあこれは、正当防衛じゃないか。 フィオルは虎の巨人に向かって一歩踏み出した。 ――やられっぱなしでいられるほど、俺はお人好しじゃない。 目の前の虎は強大だ。この肉体では太刀打ちできない。 ――もっと大きく! もっと硬く! こんなときだけ、この肉体はフィオルの想いに答えてくれる。 全身の骨がミシミシと音を立てながら巨大化していく。アスファルトに亀裂が走る。 あっという間に視線の位置が虎の巨人とおなじになった。皮膚は硬質化し、オレンジ色 をした外骨格に変わっていく。右腕には巨大なカギヅメを備えた武器が現れていた。 エクサランス・ストライカー。ただしフィオルの記憶にあるデータよりもひとまわり 大きく、あちこちが鋭く尖っていた。頭には8本ものツノを頂いている。 この姿になったからには、長時間この世界に留まることはできない。構うものか。ど うせ長居はできない身だ。 ――少しくらい憂さ晴らしをしても、バチは当たらないだろう! アスファルトを蹴り砕きながら突進する。虎の手前で高々と跳躍した。つま先に鋭い刃 物が現れる。スマッシング・キック。虎の胸板に斜めの傷を刻んでやった。返す刀でカギ ヅメの一撃、カギヅメを展開させビームを浴びせる。ブーストをかけ、再度突撃をかける。 ギガント・スマッシャー。閉じたカギヅメを虎の胴体に突き立て、何度も何度も抉り込 んでやる。 虎の巨人が、よろめきながらも右の拳を振り上げた。どのような仕組みなのだろうか。 拳は一瞬濃緑色のゲル状になると、円錐型に変形した。あれは、ドリルか。 「ヴァリア汁・ドリル!」 高速で回転するドリルからは、濃緑色の汁が飛び散っていた。 ――あの汁に触れたらダメよ。 耳元でフェアリーに囁く。いわれるまでもない。 ――もっと速く! もっと高く! フィオルは天を仰いだ。全身の体色がさっと青色に変わり、背中には巨大な羽根が生 える。右のカギヅメは長大なライフルに成り代わっていた。 エクサランス・フライヤー、汁の飛沫などとどかないほどの高度に、一瞬で駆け上が った。身体を撫でていく風圧が心地よい。 成層圏に達しようというところで、急降下。虎の巨人がこちらを見上げている。なに もさせるものか。ディストラクション・ライフルを撃ち散らした。 虎は棒立ちのまま。そのまま動くな。フィオルは巨人の肩に降り立った。ふたたびス トライカーの姿を取ると、カギヅメの先端を閉じた。虎の肩へ、深々と突き立てる。 縞模様を浮き上がらせた腕が宙を泳ぐ。その腕を、両腕で抱えた。足を首筋にかけて 力を入れる。 みちみちと音をたてて、虎の右腕をもぎ取った。 傷口から大量の汁が噴き出した。この汁を浴びるとまずいのか。ディストラクション ライフルの銃口を押し当て、発射する。高エネルギーの光芒がフィオルの頬を照らし出 した。大量の湯気を上げながら汁が蒸発していく。黒焦げになった傷口からは、呪符の 束のようなものが覗いていた。呪術的なエネルギーで動いている機体なのだろうか。 「やめてーっ!」 虎の足元に誰かいる。人間の少女だ。パジャマの上にカーディガンを羽織り、銀色の 髪を夜風になびかせている。 「やめてクリハ! これ以上汁機人を動かしたら、雑学クイズ番組ブームが終わっちゃう! また、健康バラエティ番組ブームが来ちゃうんだよぉーっ!」 健康バラエティブーム、そういったか。 あの、欺瞞に満ちた俗悪なブームをもたらそうという機体なのか、この虎は。 ――なあんだ、じゃあこの虎は、悪者じゃないか。 悪者をやっつける俺は、正義の味方じゃないか。 フィオルの胸の中に、初めて感じる類の喜びが芽生えた。 ――俺のようなバケモノが世界を守るのか! 血が沸き肉が踊る。 もだえる虎の首を左腕で絞め、カギヅメを高らかに振り上げた。 一条の光線がフィオルの肩をかすったのはそのときだった。 どこだ、上か。 一体の人型機動兵器が月を背に浮かんでいた。全身が漆黒で、背中からは禍々しい形 をした羽根が生えている。頭部は特徴的な三角形をしていた。周囲には拳銃に似た形を した小型の機械がいくつか浮遊している。 あの機体は、知っている。 ――ひっこんでいろアストラナガン! フィオルは思念の限りに叫んだ。 ――この虎は俺の獲物だ! 文句はないだろう、通りすがりに世界を救ってやるのだから! 「いいえ」 凍えるような声がアストラナガンから流れる。 イングレッタ・パディム、タイムダイバーのひとり、初対面でフィオルの土手っ腹に 穴を開けた、恐ろしい女だ。 アストラナガンがZ.O.ソードを持ち上げる。その剣先が向かう先は、フィオルだった。 ――なぜ。 「前にいったでしょう。 あなたの不安定な肉体は、ただ存在するだけで世界に破壊をもたらすのよ。 また現れたのなら、容赦しない」 ――自分の限界くらいわきまえている! 変質が始まれば、勝手に退散する! 「不要な闘争は悪よ」 ――この虎は、健康バラエティブームを引き起こす悪党なのだろう! 「あなたは八つ当たりしているだけよ」 ――黙れっ! フィオルは怒鳴った。 ――正義の味方面するな! 俺が存在することも許さないくせに! たまに楽しむことすら許さないというのか! 苛立ちは容易に怒りに置換された。 いまや、フィオルの敵意は虎の巨人ではなく漆黒の天使に向かっていた。 ――フェアリー! フィオルの声に応えて、破壊の妖精たちが雲霞のように現れて天を覆い尽くす。 ――蹂躙してやれ! フェアリーたちがアストラナガンに殺到する。ガンファミリアどもが応戦に向かうが、 数が違う。しかも全方向からだ。いかにアストラナガンといえど、避けられるはずがない。 距離が近すぎる。こちらも巻き添えを食うのは確実だろう。構うものか。どうせ放っ ておけば崩れる身体だ。 ――わからないくせに! なんの目的もなく時空をさまよい続ける孤独が! 百億の崩壊と千億の再構成に揉まれて、 自分をバケモノだと知る嫌悪が! タイムダイバーのお前には、わからないだろう! お前も味わえばいい! 生きながら身体が崩れていく恐ろしさを! フェアリーたちが一斉攻撃にかかる、その寸前だった。 突如ゲル状の巨大なものが空中に現れ、アストラナガンをすっぽりと覆ってしまった。 フェアリーたちの光線を浴びても、わずかに顫動するだけだ。効いていないのか。 あれはなんだ、どこから現れた。 疑問を差し挟む余地もない。 ゲルが空中に向かって長く伸びた。長く、長く、どこまでも長くなり、やがて一匹の 動物の姿を取った。蛇、違う。頭に2本のツノを頂き、長いヒゲを空中にくねらせてい る。よく見れば胴体からは小さな羽根が生えていた。 龍、ドラゴンだ。 「百汁調合! 万精駆吸! 汁々如律令!」 どこからともなく、少女の甲高い声が響く。 龍の口から一枚の呪符のようなものが吐き出される。信じられない速度で空中を突き 進むと、フィオルの額に貼り付いた。 ――ぎゃああああっ! フィオルは悲鳴を上げた。 呪符が、まるで爆雷のように破裂しフィオルの額を焼いたのだ。 ↓↑ 気が付くと、フィオルは上も下もない真っ暗な空間を漂っていた。 ――また、ここか。 フィオルは身体を縮めた。何度か流れ着いたことがある。熱という概念すらない超空 間だった。あの呪符がなんらかの効果を発揮し、フィオルを弾き飛ばしたのだろうか。 この空間にはまってしまうと、すぐには抜け出せない。 長い長い孤独を耐えなければならない。 ――寂しい、冷たい。 今度はどのくらいかかるだろうか。千か万か億か兆か、それ以上か。 ――いっそ消滅できたら楽なのに。 存在の定義が連続性にあるというのなら、複数の時空に点在しているフィオルは存在 しているかどうかも怪しい。 当然、存在していないものは消滅することもできない。 ふと、コメカミに違和感を覚えた。 この虚無の空間で、かすかなエネルギーの乱れが起こっているのだ。 誰かいるのか、いったい誰だ、自分のように跳ばされた者だろうか、 それとも想像もつかない怪物だろうか。 構わない。誰でもいい。話し相手になって欲しい。手に触れさせて欲しい。 前も後ろもない超空間で、フィオルは這うようにエネルギーの乱れを探し求めた。 と、鋭い痛みがフィオルの頭を貫く。 ――助けて! 人間の思念波だった。しかも、痛みと錯覚するほどに強烈なものだ。 ――どこだ、どこにいる! 助けてやる! 助けてやるから! ひとりはいやなんだ! もう、ひとりではいたくないから! いた。いや、「いた」といっていいのだろうか。 フィオルの手の平に収まるサイズの、小さな時粒嵐だ。見ているそばから収縮してい る。すでに消滅する寸前のようだった。 思念波は、その時粒嵐の中から放たれていた。 ――助けて! オレンジ色のなにかがふたつ、がっちりとお互いの手を握り合っている様が見える。 ――助けてくれ! 俺はどうなっても構わない! フィオナを! ミズホを! ラージを! ――助けて! あたしはどうなっても構わない! ラウルを! ラージを! ミズホを! ――助けて! わたしはどうなっても構わない! ラウルさんを! フィオナさんを! ラージさんを! ――助けてください! 僕はどうなっても構わない! フィオナを! ラウルを! ミズホを! 四つの声が、自分以外の誰かを助けてくれと叫んでいた。 ――あぁっ! フィオルは声もなく呻いた。 感覚の糸を研ぎ澄ます。 時空嵐の中に囚われているのは、2体のエクサランス・ストライカーだった。 中にいる人間の名前を間違えるはずがない。 ラウル・グレーデン、フィオナ・グレーデン、ミズホ・サイキ、ラージ・モントーヤ。 時空のねじれに押しつぶされ、消滅の間際にあって、4人は我が身も省みず仲間たちの 名を呼んでいた。 ――あっ、あぁっ! フィオルは両手を伸ばした。時粒嵐をつかもうとする。 しかし、手は虚しくすりぬけた。 フィオルの目の前で時粒嵐は米粒大になり、分子レベルになり、原子レベルになり、 素粒子レベルに縮んでいく。 そして、消えた。 いや、フィオルの感覚は不思議なぬくもりを察知していた。 限りなく無に近い、ただひとつの点だった。 その点が、動いている。熱を持ち、分裂し、膨張し始めている。 ――あぁっ、あぁっ! フィオル・グレーデンは時流嵐のただ中で立ち上がった。 産まれたばかりの新鮮な肉体が強烈な熱を放っている。 自分は、いままさに誕生したのだ。 わなわなと震える手で、我が身を抱きしめる。 この逞しい腕は、戦士であった父のものだ。 目にかかる赤い髪は、勇敢であった母のものだ。 長く繊細なこの指は、技術者であった母のものだ。 光を映すこの目は、研究者であった父のものだ。 全身の細胞と融合しているこれは、ふたりの父とふたりの母が手に手を取り合って作 り上げた機体のものだ。 ――あぁーっ! 目から、はらはらと熱い涙がこぼれていた。 ――お父さん! お母さん! エクサランスチームの4人が互いをかばい合う魂と肉体と、2体分のエクサランスが圧 縮され融合した存在が、この肉体だった。 ――ああ、僕はバケモノじゃなかった! お父さんがいた、ふたりも! お母さんがいた、ふたりも! 僕は、愛から生まれていた! 穏やかな波動がフィオルを包んでいた。 果てしない超空間の中で、巨大な龍が横たわっている。 その鼻先で、胸に虚無を抱く少女が立っていた。 慈しみに溢れた目でフィオルを見つめている。 ――君は、どうして。 「だってわたしは、ゼラドの一番古い友達だもの」 そのひと言で彼女の望みがわかった。 手段は、すでにこの手の中にある。 行き先は、彼女が示してくれる。 虚無の中で巨体をくねらせ、龍は人型を取った。 足元に湖面に似た青を現し、両の手から火の粉をまき散らしながら回転し始める。 その動きは、雄壮な舞いに似ていた。 ただひたすらに黒いだけだった超空間に、眩いばかりの光の柱が立つ。 「召喚! 兜汁八卦炉!」 どこからともなく浮かび上がった八角形の中に、長方形の板が次々と降り注いだ。 闇の中で胸に虚無を抱く少女の姿が浮かび上がる。 「汁々如律令!」 フィオルの胸の中で時流エンジンが力強い鼓動を打つ。 さあ、彼女の望みをかなえよう。 それだけの力は、ふたりの父とふたりの母が与えてくれた。 少年が発生した時点では、まだ存在していなかった力だ。 しかし、それにどれほどの意味があるというのだろう。 時間とは想いの蓄積だ。だから、刹那の想いが永続性を持つのだ。 できないはずがない。 フィオルの全身が変わっていく。 胸に手を当てると、光り輝く剣が現れた。 胸に虚無を抱く少女が描いた八角形に飛び込んでいく。 「スラッシャー、セパレーション!」 斬りかかる。一度ではダメだ。なら、繰り返すだけだ。 二度、三度、時空に亀裂が走っていくのがわかる。 「ディメンション・スラッシャー!」 時空の壁が音を立てて崩れた。 ↑↓→ コンクリート製の道路とブロック塀、それに2階建てのこぢんまりとした住宅が並んで いる。 フィオルは穏やかな気持ちでいた。 もう寂しくはない。この肉体が父母の想いから産まれたことがわかったから。 小麦色の肌を持つ少女の姿を思い浮かべた。 ――会いに行けなかったね、ユウカ。 膨大なエネルギーを消費したことにより、フィオルの肉体はすでに半ばまで崩壊していた。 ――許してくれるね? だって僕は、とても喜ばしいことをしたんだ。 フィオルは、4人分の愛情のもとに誕生した。 誕生とは神聖なものだ。 誕生とは喜ばしいことだ。 誕生とは祝福されるべきものだ。 だからこそ、胸に虚無を抱くあの少女は、フィオルの力を借りてこの時間にやってきたのだ。 ほかでもない、9月5日に。 道路の向こうで、クリハ・ミズハがゼラド・バランガの手を取っていた。 「お誕生日おめでとう、ゼラド!」 彼女の誕生は神聖なものだ。 彼女の誕生は喜ばしいことだ。 彼女の誕生は祝福されるべきものだ。 さあ、彼女の誕生を祝福しよう。 ――ハッピーバースディ、ゼラド・バランガ。 呟きが終わる前に、フィオル・グレーデンの肉体は跡形もなく崩れ去った。 しかしもう、絶望も恐怖もなかった。 百億の崩壊と千億の再構成の果てに、いつか望ましい肉体で誕生できる希望があるからだ。
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No.290 恋する万華鏡 No.049 恒温器 No.496 講義用黒板 No.656 紅玉弾 No.375 高純度練炭 No.777 紅葉柄のマフラー No.350 超えられない壁 No.704 ゴーストマント No.010 コーヒー豆 No.808 ゴーレムの素 No.564 小型電動ノコギリ No.738 こけもも? No.400 ご都合主義の欠片 No.576 ご都合主義の結晶 No.567 言葉様の鋸 No.646 ごみくずロンリネス No.604 ゴミ袋 No.134 米 No.478 コルト・パイソン(錬金仕様) No.636 これをたのむ No.031 コロケー No.032 (普通の)コロッケ No.452 混魂のロザリオ No.453 混魂のロザリオ(不運) No.610 金色石のリング No.098 昏睡薬 No.628 混沌意思 No.651 コンビーフ なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし ごみ袋 こけもものチャーム(銀製) コケモモのチャーム(鉄製) なし
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807 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/10/15(水) 14 52 16 ID ??? もしかしたら事故の領域かもしれないけとプチ報告。 特定のクラスのブレイクスルー技がないとハッピーエンドいけないシナリオ構成なのにGMから「○○いれてね」という指示がなかった。 おかげで解決法わかっているのにバッドエンドしか行けなかった。 ついでにボスの相性的にあるクラスは特技がほとんど役にたたない事も示唆がなかった。 おかげで一人、最終バトルが観戦席だった。 808 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/10/15(水) 14 57 58 ID ??? どうみても事故だ 809 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/10/15(水) 14 58 05 ID ??? ご都合主義が嫌いなんだろう 事故だ スレ203
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BGAソフト 「ドキドキクッキングシリーズ(1) こむぎちゃんのハッピーケーキ」 (c)2002 MTO Inc. お知らせ-しばし休止します- 管理人のPCがあんこ(おしるこ)まみれになってしまったため 先月(2013・03・07)から更新がとまっている状態です 新しいPCを買おうか迷っている最中なので いつ更新されるのかは不明です。 更新を楽しみにしてくださっている方々には 本当に申し訳ないです。 つたない文章ですみませんが こんごとも ゲーム攻略@wikiをご利用ください では、またいつか ノシ 追記:私情によりPC購入が困難になったため 無期限休止にさしてもらいます。 ご迷惑をおかけする事を深くお詫び申し上げます。 ストーリー キャラクター マップ はじめる メニュー
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ハッピーハードコア(BE LOVIN) / HAPPY HARDCORE 【ハッピーハードコア】 あのBM7thの大人気曲がついにでました、ノリまくってタタキまくってビーラビン。【配信時】 タテ乗りビート全開で、ガンガン行こうぜ。【pm14~】 ハッピーハードコア(STAR SHIP☆HERO) / HAPPY HARDCORE 他のBEMANIシリーズへの収録 収録作品 関連リンク ee MALLの配信曲として登場した楽曲。 ee MALLの稼動が終了した後はポップンミュージック14 FEVER!において、隠し曲の全解禁に伴い他のee MALL初出曲と共に常時プレイできるようになった。 初出がbeatmaniaからの移植曲だが、音源はbeatmaniaIIIのロングサイズ版そのものである。 担当キャラクターはアスパラ星人→フューチャン(2P)と変更されている。 楽曲の背景はアイドルガールを流用している。 BE LOVIN / D-crew BPM 185 5b-20 N-23 H-33 EX-38 新難易度 5Buttons NORMAL HYPER EXTRA × 29 39 44 D-crew名義の初のハピコア曲。曲名が、とある世界規模の事件に関わる某人物と聞こえ方が似ているとか噂されているが、実は愛を語る歌である。地中海の太陽のように明るく、「everyone,everyone…」とささやくフレーズが印象に残り、beatmaniaシリーズでもかなりの人気があったようだ。ハピコアだけあって、アップテンポでノリのいいフレーズが印象的。 beatmaniaIIIのロングバージョンをポップンに収録しており、譜面はDPのものをベースにしている。ノーマルはいたってシンプルだが、中盤に隣接押しのある箇所でミスしないように。ハイパー(=DP・Hard)は横に広い譜面配置が多く全体的に忙しいが、殺しはないので隣接押しをしっかりと拾えば問題ないだろう。EX(=Another)は同時押しが増えたが、アーティスト特有の左右に振る配置に注意。しかし、同時押し譜面である以上は同時押しのパターンを見切ってしまえばLv38の割には容易にクリアできるのでは?5ボタンはグランヂデスに次ぐ最高ノーツ(ロング除く)を誇り、9ボタンNよりもノーツが多いが、そこまで大差はないだろう。ただ、最高レベルの20にしては詐称に近いかも。 他のBEMANIシリーズへの収録 beatmania 7thMIXで初登場。最初と最後に1回転スクラッチが配置されている、1回転スクラッチのある数少ない曲。 beatmaniaIII APPEND 7thMIXで登場した、beatmaniaIIIシリーズ限定でプレイできる5鍵より長いバージョン。ポップンに収録されている方でもある。 序盤の効果音からして、CD音源では2003年春に発売された「beatmania THE BEST PROMINENT」がこれに該当。 Dance Dance Revolution EXTREMEで収録された。beatmania(5鍵)の方の短いバージョンである。 激(EXPERT)譜面は、終盤の同時押しが混じる8分ラッシュに注意。 REFLEC BEAT ジャケット groovin !! Upperで「BEMANI MUSIC FOCUS」の1曲として、2015/01/08より登場。 音源は「beatmania THE BEST PROMINENT」(およびbeatmaniaIII、ポップン)と同一。 上記企画でのコメント(当時) ビーマニハッピーハードコアの歴史はここから始まったと言いたい! ワクワクするような4つ打ちのビートを! 初代ビートマニアの思い出に乾杯。 プレーデータを閲覧できる携帯サイトなどでは曲名表示にできないため、ハッピーハードコア(LOVE D RIVE)とアーティスト名表記も重複している。このためハイスコアをメモしておくか、レベル検索を利用しなければ判断できない。これはトランス(Colors(radio edit))とトランス(REINCARNATION)も同様である。 5ボタンは9ボタンNよりも多いノート数でグランヂデスには及ばないとはいえ、詐称クラスに近い。 収録作品 ※ee MALL関連曲の配信時期に関してはee MALL曲を参照。 AC版 ポップンミュージック9~ポップンミュージック13 カーニバル ee MALL曲として配信。 ポップンミュージック14 FEVER!からの全作品 14の隠し要素全解禁から常時選択可能になった。担当キャラクターをフューちゃん#?(14-2P)に変更。 CS版 ポップンミュージック14 FEVER! 関連リンク -関連曲 ハッピーハードコア(LOVE D RIVE) D-crew 楽曲一覧/ee MALL (楽曲一覧/ee MALL 2nd avenue)
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目指せ!ハッピーエンド ◆gry038wOvE さて、時刻は十時過ぎである。 昼飯の目安とされる時間まであと一、二時間というところだが、連戦していた一文字とラブのお腹はあまり満たされていなかった。 特に一文字だ。ラブもそれなりに空腹ではあるが、食欲はなぜか失せている。一文字は、朝飯も食べていないし、自由行動のできる時間のうちに、少し腹を満たしておきたいと考えていたのだ。 第一、十二時といえば、また放送が行われる。するとまた人の死を聞かされる。 その中に知り合いもいるかもしれないというのに、ご飯を食べるどころではない。 そのため、一文字とラブは少し早めに食事を摂ろうとしていた。 (ここに来てから食事を摂るのは……二回目か……) ラブはそう思いながら、デイパックの中身を漁っていた。 そう、彼女がここに来てから食事を摂るのは二回目になる。 巴マミ。 彼女との出会いを、ラブは忘れないだろう。しかし、彼女という友達ができてから、楽しい思い出と言えるのは、あのティータイムだけだった。 もう彼女とお茶を飲むことも、ドーナツを食べることも、楽しく話すこともできない。 そう思うと涙が出そうになったが、やはり物を食べる時くらいは楽しくやりたかった。ラブが急に涙を流したら、一文字もきっと困惑するだろう。 これから、カオルちゃんのドーナツを食べに行くたびに、マミのことを思い出すのだろうか。 せめて、マミの写真が欲しかった。彼女の姿を忘れない為に。 時間が経つと、人の顔は記憶の中で色あせてしまう。それがどんなに大事な人で、どんなに一緒にいた人のものでも、だ。 ただ、写真さえあれば、マミはずっとそのままの形で残り続けることができる。 しかし、ラブは今、もっと別の形で彼女を思い出すことができることに気づいた。 カオルちゃんのドーナツを見たときだ。 こうしてドーナツを眺めたとき、初めて彼女の姿を完全に思い出すことができる。それは、マミとお茶をしたときの表情であり、マミの死に際の微笑みでもあった。 だから思う。また、元の世界に戻っても、ラブはマミを思い出すのだろうと。 「……はぁ」 ラブは溜息を吐いた。 溜息を一つ吐けば、幸せも一つ逃げてしまうかもしれない。けれど、吐かずにはいられなかった。これは、幸せが一つ逃げたぶん、溜息を一つ吐いたのだ。 なんだか、食欲がなくなってしまう。 またしばらくしたら、戦いに借り出されるのだ。 思えば、ここに来てから幸せな時間なんて、そうそうあるものではない。ほとんどが戦いの記憶。それも、命をかけた戦いだ。 戦争と何ら変わりはない。 大砲のような威力を持つ力が、この場には幾らでもある。自分もその大砲の一つなのだ。 「一文字さんは、いつから仮面ライダーなんですか?」 ラブは少し訊いた。 この男性のことを、ラブはまだ全然知らない。 彼が仮面ライダー2号で、一文字隼人であること。それ以上の何も、彼女は知らない。 最初に出た質問がこんなものであるのは、少しおかしいかもしれないが、こんな場所にいるとおかしくもなる。 「ん? 随分前」 「随分前って、そんなアバウトな……」 「もう何年も、仮面ライダーのままだな……マトモな人間の体って、どんなものなのか忘れそうになるくらいだ。まあ、バケモノ呼ばわりされるのも、日常生活で力を加減するのも、悪の組織に狙われるのも、もう慣れたしな。……こうして飯を食うのも不自由しねえし」 一文字はそう言いながら、パンを咥える。 もはや哀愁も何もない。自然と、ただの会話の中で口から出て行くような言葉だった。 しかし、マトモな人間の体だとか、バケモノ呼ばわりだとか、一文字の口から出てくる言葉は少し自嘲気味でもある。 「ああ、そういや言い忘れてたけど、俺は改造人間とかいうヤツで、体がほとんど機械なんだ。そのお陰であんな姿に変身できる」 「改造人間!?」 「カメラマンやってたんだけどな……ちょっと危ない橋渡りすぎた。ショッカーとかいう秘密結社に捕まって、組織に忠実な改造人間にされるところだった。脳までイジらされてな。そんで、それを助けてくれたのが仮面ライダー1号、本郷猛だった。まあ、俺はそん時、既に俺の体は改造されちまってたから、あいつは俺を助けちまったことを後悔したらしいけどな」 「本郷猛さん、ですか……」 本郷猛。その名前は聞き覚えがあった。 あの広間で一文字と共に呼ばれた男で、放送で死者として呼ばれた名前である。 一文字隼人の命の恩人にあたるはずが、既に死んでしまったらしい。 「……コラ、あんまり悲しそうな顔すんなよ。本郷はきっと、誰かのために死んだんだ。あいつも本望さ。改造人間になったら、生きることは死ぬことより遥かに苦痛だって言ってたしな。……ま、あいつに未練があるってなら、BADANや加頭を叩き潰せないうちに死んじまったことだろう」 生を苦痛と感じながらも、誰かを護るために生きる。それが、本郷猛の生き方だった。 改造人間になる者がこれからも増えるのなら、それを防ぐために。自らと同じ苦しみを誰にも味合わせないために。 「……一文字さんは?」 「あ?」 「一文字さんは、生きることがそんなに苦痛なんですか?」 ラブは、まだ悲しげだった。 返答によっては、泣き出して、一文字に小言を言いかねない。 大人らしく、素敵な答え方を考えるが、そう考えるとやはり自分の内面について深く考える必要が出てきた。 こんな質問をする人間は、極稀にいるが、こんな若い少女だったことはない。 「……ま、楽しくはねえな。辛いことの方がずっと多い。俺たちにとっちゃ、毎日がこのバトルロワイアルみたいなもんだ。でも、だからこそたまーに少しでも楽しいことがあると、それがたまらなく嬉しいんだよな。どんな些細なことでも、そのために生きられるっていうくらいって感じる……まあ、そんなとこかな」 「……」 「そうだな、たとえば、飯食ってるときとかも、結構楽しい時間だ」 一文字は表情も変えずにパンを食べている。 一食分は軽く食べるつもりだろう。ラブはまだ、何も口に入れていなかった。 「しかし、これはあんまり美味くねえな。……ま、飯にも嫌な思い出ってのが一つあるんだよ。ネオショッカーとかいう連中のせいで」 「い、一体何が……」 「飯屋で勘定が10万円とかわけのわからないこと言われて、無銭飲食で捕まった」 「じゅ、10万円!? どれだけ食べたんですか!?」 「テンプラ定食ひとつ」 ラブは冗談だと思って、思わず噴出してしまう。一文字という男は、こういう男だった。 たとえ辛い話題でも、すぐに笑い話に変えてしまう。 本当の意味で、誰よりも感情が「顔に出てしまう」男だったので、辛さは極力隠して生きてきた。たとえ悲しいと思っていても、それを顔に出しても、誰かの笑顔は生まれない。 「で、飯は食わないのかい? 俺が食っちまうぞ」 「いえ、……でも、食べ物を前にすると、少し思い出すんです」 「なんかあったのか?」 「数時間前です。私と一緒にお茶をした巴マミっていう女の子が……」 「巴、マミ……」 聞き覚えがあるので、一文字は一度その名前を復唱する。そして、口を開いたことを後悔した。 巴マミ。その名前は死者の名前であった。 一文字の知り合いにも真美という女性がいたので、その名前ははっきりと覚えている。 ラブと知り合いだったのか、と思うと一文字も少し暗い表情をする。 「さっき、一文字さんは本郷さんの事を教えてくれましたよね。私は本郷さんのことをよく知らなかったけど、その話を聞いたらどんな人なのか……っていうのがよくわかりました」 「……」 「人は死ぬのも辛いけど、忘れられてしまうことも辛いんじゃないかって思うんです。私、マミさんの事、色んな人に知って欲しい。マミさんの知り合いも、二人死んでしまったから……だから、マミさんについての話、聞いてくれますか?」 「……ああ、そうだな。でも、一つだけ条件出していいか?」 「なんですか?」 「飯は食っとけ」 ★ ★ ★ ★ ★ 一文字は巴マミという女性について、あらゆる情報を得た。 彼女の知り合いの名前や、彼女の様子・外見、彼女とドーナツを食べたことや、彼女の死に様に至るまで、はっきりと告げた。 ラブはそれを伝える中で、自分がマミについて知っていることなんて、ほんの少ししかないのだと気づいた。自分が思っている以上に、一文字に伝えられる情報は少なかった。 忘れていることなんて、一つもないはずなのに、ラブは全てを話すことはなかった。 パンは少しだけ減っている。 一応朝食を食べていたことや、気分が優れない状態であることもあり、一食分は減っていない。 それでも、もう彼女は「ごちそうさま」と言っていた。 一文字は、摂取量については何も言わない。むしろ、彼女の話の方に気が向いていた。 「良い友達に出会えたんだな」 「……はい」 ラブの言葉は、少しだけくぐもっていた。 一文字は、ラブにどういう言葉をかけるか迷った。 良い友達に会えたのはいい。しかし、その友達を失ってしまったのが、問題なのだ。 「それに、テッカマンとかいう奴等が殺し合いに乗ってるのもわかった……そいつら、絶対許せねえ」 マミについての話に、必然的に登場する「テッカマン」というワードもかなり重要だった。 このテッカマンは、マミやラブを襲撃した相手である。プリキュアを撃退するということは、なかなかの強敵だろう。 そのうえ、相手が少女であっても容赦なく襲撃し、人を蟻共と呼ぶ歪んだ人間性の持主である。 実際、テッカマンが誰もそうであるとは思えない。 「俺も会いたかったよ、そのマミって奴に……良い奴が、何故かいっぱい巻き込まれてるんだよな、この殺し合い……」 正義感の強い者、人を思い遣る者、人を守る者……この殺し合いにはそんな人間がたくさんいた。仮面ライダーはもちろん、ナイトレイダーやプリキュア、魔法少女など、暗黒騎士など、何人もいる。 というより、善人と悪人に極端に二分されているのだ。 魔法少女にしろ、テッカマンにしろ、仮面ライダーにしろ、プリキュアにしろ、変身能力の持主という点で共通しており、例外であるナイトレイダーも特殊部隊。 まあ、善や悪が必然的に関わってくる立場の人間であるのが特徴だ。一般人がいるのかどうかも怪しいところだ。 「……でもな、ラブ。その子を死なせちまったせいで、さっきから暗い顔してるが、それって全然良いことじゃないと思うぜ」 「え?」 「罪悪感を感じるのは、君が良い奴っていうことの証でもある。けど、それを顔に出し続けるのは、自分がそれだけ良い奴だって言って回ってるだけだ、それ以外の何にもならねえ。……お前がマミって奴との約束を果たしたい反面で、マミを死なせた罪悪感を感じてるのは、俺にもよくわかるよ」 「……はい」 「けどな、罪悪感を感じていても、それに潰されそうでも、笑顔でいれば、もっと周りのためになることがある。他人の笑顔を作れるし、他人に幸せを分けられるだろ? まあ、明るくやるのも暗くやるのもラブの自由だけどな。で、ラブはどっちがいい?」 それは、幾つもの罪悪感を、幾つもの悲しみを、幾つもの殺人を、幾つもの痛みを笑顔の裏に抱えてきた男の言葉だった。 明るい笑顔でいるか、暗く俯いた顔でいるか、ラブはどちらを選ぶか、一文字は聞きたかった。 この選択は、実は生易しいものではない。 己の痛みを隠して生きていくというのは、修羅の道である。 しかし、一文字はラブにはその修羅の道を行き続けてほしいと思ったのだ。 それは────一文字自身が、その修羅の道を進んだ結果に見られる他人の笑顔を、案外楽しんでるからに違いない。 「私は、」 「待った。答えを言う必要はねえ。ここでどう答えたって、実際どうなるかはわからねえしな。だから、答えを見つけたら態度で示せ。その方が、意味がある」 「はい!」 一文字は、ラブの表情を見て笑った。 それは、ラブが一文字の言葉を納得し、「他人の笑顔を作る」ことを決めたゆえの笑顔だった。 また、ラブと人との約束が増えた。 ★ ★ ★ ★ ★ 「で、飯のついでだから支給品を出してみたが……」 「なんでそんなに説明口調なんですか」 一文字とラブの前に、支給品がざっと出されている。 姫矢准による戦場写真や、ドーナツ、毛布、紅茶のほかに少しだけ、他の支給品が残っていた。 それらの支給品をお互い見せ合うのは、やはりその支給品の本来の持主を探る為だろう。 しかし、お互いに心当たりの所持品は一切なかった。 「ほんと、何に使うのかもわからねえガラクタばっかりだな」 毛布やドーナツはある意味役に立つが、写真などは役立たず。 それと同じように、役に立つものと役に立たないものを分類する。 まずは戦闘に使えそうなものに分類される支給品。 これは一つしかない。一文字の支給品だ。 「モロトフ火炎手榴弾……」 モロトフ火炎手榴弾、三つ。そういえば、モロトフとかいう参加者もいたが、この際それはどうでもいい。 これはなかなか強力な武器で、扱いを充分注意しなければならない支給品だ。 そもそも、手榴弾や重火器自体、かなり扱いを注意しなければならない代物なのは言うまでもない。しかし、そのリスクの割には、この場での実際の効用が低いのが問題だ。 先ほど、強力な武器とは言ったが、この場では別だ。何せ、誰もが仮面ライダーのような力の持主なのだから。 次に生活を便利にするものに分類される支給品。 これは毛布やドーナツ以外にも、一つあった。これはラブが受け取ったマミの支給品である。 「うわあ……何だかわからないものがいっぱい……」 工具箱だ。これについては色々と考えることがある。 首輪という存在があることを踏まえて考えると、主催者の意図が見え隠れしてくる。 ドライバーやスパナなどの工具が入っているということは、首輪の解除にも使用できる可能性が高い。ドライバーも何種類もあるため、もはや何を使えば良いのかさっぱりだ。 これで首輪を解除してみろ、ということなのだろうか? ──この首輪がこんなものでは外れないから、無駄な努力をする人間を笑おうということなのだろうか。 それとも、これを解除してしまうこともゲームの一部と考えているのだろうか。 とりあえず、しばらくはこれを使うわけにはいかない。 マミの首輪はあるが、サイズは一文字たちのものに比べると小さく、このドライバーで解除を実験できるかはわからないし、第一、貴重な首輪を一文字の手で迂闊に使ってしまうのも問題だ。 こういう事は、結城や沖など、科学知識が一文字よりも遥かに高い人間に任せた方がよさそうだ。 一文字も、機械について、ある程度の知識はあるが、より専門的な人間に任せた方が得策だ。 少なくとも、彼らが放送で呼ばれていない現状ではその方がずっといい。 そして、何にも使えそうにない支給品がふたつ。 「……まずは俺の支給品だな。タカラガイの貝殻だ」 これはガラクタ以上の何者でもないだろう。 使い道もないだろうし、実際このゲーム内での用途はない。 実質、一文字の支給品の中で戦闘に使えそうなものはモロトフ・カクテルのみだろう。 残りはタカラガイと写真だけだ。人によっては、こんな支給のされ方もあるということだ。 「それと、絵本ですね」 マミの支給品は、「黒い炎と黄金の風」という絵本である。 最後のページが真っ白な、不思議な絵本だった。画力は高いし、話は単純ながらも勧善懲悪とヒーローの悲哀を感じ、どことなく一文字やラブも共感しやすい内容だった。 無論、何の効力もないガラクタには違いないのだが、しかし、何かを感じる。 この絵本に描かれた、「黄金の戦士」という希望。それは、まるでラブや一文字のような存在のことであるような。そういえば、マミも黄色系の色であった。 とにかく、殺し合いの場に借り出されるような邪気のある本ではないと思う。この作品は、何か希望を信じている人が書いた作品であるような気がするのだ。 「……まあ、支給品がガラクタだろうが、俺たちには俺たちの力があるから、別に問題はないだろ」 「そうですね。でも、何の意図があって、貝殻や絵本を……? 工具箱は、加頭っていう人やサラマンダー男爵にとっても不利になるものだし、この絵本なんかは、まるで──」 「ああ、これを読んだら、まあ……よっぽど感受性の高い奴に限るが、逆に俺たち対主催組の士気が上がるんじゃねえか? って感じだな」 「そうですね! この絵本の騎士みたいに、私たちが黒い炎を振り払わないと!」 (その感受性高い奴はここにいたよ……) ラブの目は、この絵本を読んで無駄に輝いている。 はっと、ラブはこの絵本の最後のページが気になった。 「一文字さん、この白いページの先はどうなるんでしょう……?」 「ん? そりゃ、流石に作者しかわからねえだろ。…………と思ったが、いや、やっぱり違うなコレ」 「え?」 「真っ当な出版物には乱丁・落丁なんて滅多にないし……それも最後のページがないってのは、出来すぎだ。これは、作者の意図で、わざと最後のページが真っ白になってるみたいだな。この先のストーリーは読者で決めろ、っていうことだろう」 仮にも出版物と関わる職業だった一文字は、その本を見て言った。 おそらく、余韻を残す意味と、最後のページを自由に書かせる意味があったのだろう。 子供の想像力を作るにも良し。最後のページまでに、もうこのストーリーは作者の手を離れているのだ。 ラブの考えるエンディングは一つだ。 「……じゃあ、やっぱりハッピーエンドがいいですね」 「そうだな。ま、この絵本もマミから受け継いだものだろ。最後一ページ、自由に描いてくれや」 「一文字さんも一緒に、ですよ」 ラブに言われて、一文字は彼女がこの絵本を現実に当てはめて考えていることに気がついた。 なるほど……この殺し合いにハッピーエンドを作れ、ということか。一文字は苦笑する。 面白いことを言う子だ。 「……そうかい。まあ、少しは協力するぜ」 二人は休息を終えて立ち上がる。 ラブが知り合った女の子に、星空みゆきという子がいた。 そして、その子は物語にハッピーエンドを作ることを目指していた。 そう、ラブも同感だ。 更に言うなら、一文字も同じである。 「で、それはともかくこの貝殻はなんか意味があるのか……」 「その貝殻は……って、なんで余計な話するんですか! 折角、話も綺麗に纏まったところなのにー!」 「いや、オチも必要かなって思って」 「いりませんよ!」 ──ちなみに、このタカラガイは千樹憐という男が、ある施設から脱出した際に海辺で得たものである。 絶対に脱出できないとされた施設から、ただ広い世界を見に行く為に憐は脱走し、友達に渡した貝である。 運命に抗う希望、その象徴ともいえる貝殻だった。 まあ、そんなバックグラウンドは、憐がここにいない以上、誰も知る由もないが。 【1日目/昼】 【F-2】 【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】 [状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、精神的疲労(中)、罪悪感と自己嫌悪と悲しみ、決意 [装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア! [道具]:支給品一式×2(食料少消費)、カオルちゃん特製のドーナツ(少し減っている)@フレッシュプリキュア!、毛布×2@現実、ペットボトルに入った紅茶@現実、巴マミの首輪、工具箱、黒い炎と黄金の風@牙狼─GARO─ 基本:誰も犠牲にしたりしない、みんなの幸せを守る。 1:今は一文字さんを守りながら休む。 2:マミさんの遺志を継いで、みんなの明日を守るために戦う。 3:プリキュアのみんなと出来るだけ早く再会したい。 4:マミさんの知り合いを助けたい。もしも会えたらマミさんの事を伝えて謝る。 5:犠牲にされた人達(堂本剛三、フリッツ、クモジャキー、巴マミ、放送で呼ばれた参加者達)への罪悪感。 6:ダークプリキュアとテッカマンランス(本名は知らない)と暗黒騎士キバ(本名は知らない)には気をつける。 7:どうして、サラマンダー男爵が……? 8:石堀さん達、大丈夫かな……? [備考] ※本編終了後からの参戦です。 ※花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、月影ゆりの存在を知っています。 ※クモジャキーとダークプリキュアに関しては詳しい所までは知りません。 ※加頭順の背後にフュージョン、ボトム、ブラックホールのような存在がいると考えています。 ※放送で現れたサラマンダー男爵は偽者だと考えています。 【一文字隼人@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、胸部に斬痕、左腕が全体的に麻痺 [装備]:モロトフ火炎手榴弾×3 [道具]:支給品一式(食料一食分消費)、姫矢の戦場写真@ウルトラマンネクサス、タカラガイの貝殻@ウルトラマンネクサス [思考] 基本:仮面ライダーとして正義を果たす 0:今は身体を休める。 1:ラブと一緒に石堀達を探しながら市街地を目指す 2:他の仮面ライダーを捜す 3:暗黒騎士キバを倒す(但しキバは永くないと推測) 4:もしも村雨が記憶を求めてゲームに乗ってるなら止める 5:元の世界に帰ったらバダンを叩き潰す 6:この場において仮面ライダーの力は通用するのか……? [備考] ※参戦時期は第3部以降。 ※この場に参加している人物の多くが特殊な能力な持主だと推測しています。 ※加頭やドーパントに新たな悪の組織の予感を感じています(今のところ、バダンとは別と考えている)。 ※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました ※18時までに市街地エリアに向かう予定です。 ※村エリアから南の道を進む予定です。(途中、どのルートを進むかは後続の書き手さんにお任せします) ※つぼみからプリキュア、砂漠の使徒、サラマンダー男爵について聞きました フレプリ勢、ハトプリ勢の参加者の話も聞いています ※石堀の世界について、ウルトラマンやビーストも含めある程度聞きました(ザギとして知っている情報は一切聞いていません) 【支給品解説】 【モロトフ火炎手榴弾@現実】 一文字隼人に支給。 旧ソ連で開発された焼夷手投げ弾。形状は棒状の柄の先に燃料 (焼夷剤) が詰まった陶磁器製の容器が装着されたもので、燃料にはガソリン・ベンジン・硫黄、そのほかにも高オクタン燃料やピクリン酸や硫酸の混合液など、さまざまな可燃物が使用されていた。 使用方法は炸薬部に付属する安全ピンを抜き信管部分を摩擦発火、その後投擲を行う。遅延時間は0秒から10秒まで設定することができたため中の燃料を十分気化させてからの爆発も可能であった。着火すると陶磁器製の弾頭部分が破裂し飛散、その後十分気化した可燃性燃料が引火し周囲を巻き込み爆発を起こす。そのため使用方法を誤ると大変危険な武器でもあった。 参加者のモロトフとは関係ない。 【タカラガイの貝殻@ウルトラマンネクサス】 一文字隼人に支給。 千樹憐が、プロメテの子の施設を抜け出して海へ行ったとき、拾ってきて吉良沢優に渡した貝殻。 タカラガイは非常に綺麗な貝殻を持つことで有名。 吉良沢はこの貝殻を現在も大事にしている。 【工具箱@現実】 巴マミに支給。 ドライバー、スパナ、ペンチ、ニッパ、ハンマー等等がそれぞれ多種類ずつ入れられた工具箱。 持ち運びやすい手持ちタイプで、もしかしたら首輪の解除に使えるかもしれない。 【黒い炎と黄金の風@牙狼】 巴マミに支給。 御月カオルの父が描いた絵本であり、黄金騎士(鋼牙の父・大河)とホラーの戦いについて描かれている。 最後の1ページは意図的に空白になっており、見た人それぞれが黄金騎士の未来を描くようになっている。 最終回にて、カオルが描いた最後の1ページを読んだ鋼牙は号泣する。 時系列順で読む Back 果てしなき望みNext あざ笑う闇 投下順で読む Back Nのステージ/英雄─ヒーロー─Next あざ笑う闇 Back ピーチと二号! 生まれる救世の光!!(後編) 桃園ラブ Next 悲しみの放送! 想いを忘れないで!! Back ピーチと二号! 生まれる救世の光!!(後編) 一文字隼人 Next 悲しみの放送! 想いを忘れないで!!
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ケモモモ!! 305 名前: 創る名無しに見る名無し [sage] 投稿日: 2010/03/13(土) 02 49 28 ID cbJBB4+w ≫304 ぬおおお、キュンキュンするっ ケモモモ!! 元ネタはデュラララ!!